茶道具 Tea Utensils
■織部弾香合
◇桃山時代 楽了入補作
◇「四人の作者」
◇径5.4cm 高4.1cm
本作は、「織部弾香合」で、蓋は桃山陶の織部で、身は楽家九代了入による補作です。補作が、身の部分の破損によるものか、その時の所蔵者による行為的な補作であるかはわかりません。
行為的な補作として物語をひとつ創作すれば、ある織部弾香合が桃山の陶工によって作られ、幾人かの所蔵者をめぐり、ある茶人が所持しとき二人の茶人の目に留まり、所望された。「香合はひとつ、所望者は二人」。困った茶人は、「それならば香合を二つに・・・」。茶人に依頼された了入が身と蓋の補作をし、織部弾香合は二つとなり、二人の所望者へと・・・
以上は創作の物語でしかありませんが、桃山陶注文主+桃山陶工(実作者)+所蔵者(補作依頼者)+了入(補作実作者)=本作織部弾香合として今に遺っているのは事実であり、注文主、桃山陶工、了入はもちろんですが、了入に補作依頼したこの所蔵者がいなければ、「本作は存在しなかった」と言えるのではないでしょうか。
このことから、注文主・実作者ばかりでなく、所蔵者も、<美術品に新たな価値を付加し、後世に遺す>という行為によって、「作者ともなりえる」と言えるのではないでしょうか。